経験がなくてもわかる脱毛

無理をしない自然に従う気持ちを忘れたくないものだ。
健康のすすめに従わない、あるいは健康のすすめに逆らう人がいる。
「逆らう」という表現が正しくなければ、健康のすすめに疑問を感じ自然の成り行きにまかせる人である。
米国でベストセラーになり、ヨーロッパでも話題沸騰の「癒す心、治る力」の著者A博士はある講演会で「食事、運動、どうせ死ぬ!」と書いたTシャツを着た一人の聴衆を目の前に見て、自分のすすめる健康教育に一瞬、不安を感ずる場面があった。
健康教育なんてそもそも大見得きって他人様に教えさとすようなものではないからである。
健康のすすめに逆らう言動は意外と多いものだ。
ある愛煙家は「俺はタバコを喫って自殺を試みているのだ」と公言しているし、また自分のオフィスの机の上に「サンキュー・フォア・スモーキング」と書いた置物を置いて恥じないどころか自信満々の人もいる。
このように健康に逆らうように見える人は、確かにタバコは身体によくないと知ってはいても、すべて「自然にまかせよう」との達観した気持ちの人達であろう。
自らの生命に淡々としているとか言える。
だからこのような人に禁煙をすすめ、命乞いを強いるようなことはできない。
こんな話を聞いたことがある。
若い医学生が死を間近にした老人にタバコはよくないから止めなさいと、老人の唯一の楽しみを取り去ったという。
まったくやりきれない話である。
がん検診に対して疑問を呈する人の論拠の一つは、莫大な経費を使って助からないようながんを見つけることに意味があるかということである。
大部分のがんは早く見つければ治るのであるから、この考えは誤解と誇張があって賛成できないが、要は「無理するな、自然に逆らうな」というその人の言い分に共感できるところはある。
がんの治療でも、がんになったら無理な治療をせずに放っておいたらよい、いまさら手術も化学療法も意味がないという考えもある。
事実、がんで亡くなった漫画家のHさんは入院・手術を拒み、緩慢に朽ちていくことを望んで亡くなったと新聞に書いてある。
これも極端な考えかも知れないが、その人間の生き方に共感できる点はある。
要はケースバイケースである。
先にも述べたが、そもそもがんは撲滅できるとか、この世から追放できるとか考えたら大間違いである。
人間長生きすれば、いつかはがんになるかも知れない。
がんを「悪」とみたて、これを人類から追放しようとか撲滅しようとかいうところに、自然に逆らう無理がないのだろうか。
江戸時代の梅毒はかなり多くの人達に感染した病気だ。
人々は治療法も見つからないまま病を恐れながらも一方に病を取り込み、病を普通のこととして少しも恥じないどころか、病に親しい態度さえ読みとれたという。
これは医療史のTさんの言葉である。
がんと梅毒を同一視することはできないが、がんを視る目のなかに江戸の梅毒に対するようにがんを「受け入れる気持ち」をもつことも大切なのではないか。
がんを「悪」として排除しようと考えるのではなく、むしろ自らのものとして自分に取り込んだ、自然に従う心も大切であろう。
この意味で健康のすすめに逆らう気持ちもまた結構なことではないかと思うのである。
食事とがんの密接な関係をあれこれ論じてきたが、食事以外で問題になるのはまずタバコである。
タバコはみんなが想像しているよりは遥かに健康に悪い証拠があげられている。
ところがタバコはアルコールもそうだが、その人にとっての人生唯一の楽しみであったりするから厄介である。
喫煙したからといって必ずがんになるわけではない。
でも、肺がんだけでも喫煙者のおよそ一五パーセント(二〇パーセント以下)の人がいずれはなる。
肺がん以外にもいろいろながんや心筋梗塞をふくめ喫煙が原因となる病気にかかる危険度はかなり高い。
喫煙は喫煙者本人や家族に対する影響だけではなく、次の世代の子供達の奇形とかがんの多発の原因にもなる。
喫煙によってビタミンCが大量に消費され抗酸化作用が低下するために、喫煙男性の精子の染色体が遺伝子上の異常を起こし次世代に引き継がれるからである。
こんなに悪いタバコを吸うのはよくないが、こんなに悪いものを作って売るのはもっとよくない。
タバコの外装に「健康に悪い」と表示はしてあるが、そんな責任逃れのための気休めの文言ですむ話ではない。
アメリカのタバコ会社は自国で売れなくなったり、損害賠償を求める裁判でひどい目にあったりした損失分を外国に売って補填しなければならない。
だから外国への売り込みは、とくにアジア諸国に対しあらゆる手を使い、しかも熾烈である。
いま、公衆衛生上の最大の敵は「タバコ」と考える専門家が少なくない。
その敵との戦いはまさしくタバコ戦争である。
ところがなんとかならないものかと心配して集まったある国際会議に一人がそっと洩らした言葉。
「タバコを吸う人がアジアに多いのは現実だ。
この現実を変えようとするのは大自然に逆らうのと同じではないか。
」と。
要するにあきらめるより仕方がないのではないかというわけである。
なんとも悲しい話である。
昔から銀幕にタバコは付きもので、とくに強くたくましいアメリカの男たちのイメージには不可欠だった。
テレビ、映画でおなじみの俳優Dは一九七五年から長年にわたって米国の代表的なタバコのコマーシャルにカウボーイ姿で登場し、タフでハンサムな愛煙家を演じてきた。
ところが、彼は肺がんで死亡した。
しかし発病後の彼は偉かった。
製造会社の株主総会に出席して広告の自粛を訴えるなど、反喫煙運動の先頭に立ったのであった。
アヘン戦争(一八四〇~四二年)があった。
イギリスは中国に売り込もうとした綿花の輸出が思うようにいかないとみると、インドで栽培したアヘンを中国に売り込んだ。
いまのタバコの売りつけにも似ている。
アヘン中毒で廃人になっていく人達の姿はなんとも悲しく、これに怒りを感じた憂国の人達が持ち込まれたアヘンを焼き捨てたため、これに怒ったイギリスとの開で起こったのがアヘン戦争である。
国力もなく当然ながら敗れた中国は香港をイギリスに割譲せざるを得なかった。
このアヘン戦争のアヘンはいまのタバコ戦争のタバコに似ている。
アヘンとタバコはともに吸いだしたらやめられない依存性があり、しかも生産的ではない。
依存性になる原因は「モルヒネ」と「ニコチン」の違いがあり、また中毒症状は比較的急性か慢性か、重症か軽症か、あるいは中毒からの逃避のむずかしさの程度の違いはあるが、ともに「中毒」を起こす点では全く同じである。
最初から危うきに近づかないこと、また吸っても中毒になる前に早くやめることである。
世界各国の喫煙率を調べると、調査年次が違うので厳密な比較はできないが、概して先進国に低く、開発途上国に高い。
ただし日本は例外で、日本の成人男子の喫煙率はおよそ六〇パ一セントで東南アジアのタイ、シンガポールよりも高い。
わが国の喫煙率を七つの地域にわけて見ると、H地区は男女ともに一番高い。
ということはH地区男子の喫煙率は統計数値の出ている国のなかでは世界のナンバーワンであり、女子の喫煙率は日本のナンバーワンということになる。
日本人男性の喫煙率は次第に低くなりつつあるが、とくに年齢別にみると六〇歳以上の人に低くなっているが、二〇~四九歳では思ったほどには低くなっていない。
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